ART&CREATION FESTA 2015

イセタン アート&クリエーションフェスタ2015

ART IS THE FUTURE.
アートはいつもミライを見せてくれる。

アート&クリエーション。それは、時代や国境を越え、常識や固定観念を裏切り、かつてないビジョンを生み、創り、切り開くもの。アーティストたちの創造力の発露は、私たちに明日への想像力を呼び起こしてくれます。『イセタン アート&クリエーションフェスタ2015』は、アートの先に未来が見える2週間。ファインアートからデザインまで、全館でアートピースをご紹介します。

「イセタン アート&クリエーションフェスタ2015」のロゴ制作や作品提供をしていただいたアーティスト伊藤桂司氏。旧知の編集者の後藤繁雄氏を聞き手に、そのクリエーションの原点に迫る!

Photography & Movie:濱田祐史

後藤繁雄氏(以下 後藤):今日は動画じゃないし、気楽にやろうよ。
さて、こんにちは。ごぶさたしております。

伊藤桂司氏(以下 伊藤):ごぶさたしております。こうやってお話しするのは久しぶりですね。ってなんか堅いですね(笑)

後藤:いつも飲みながら、打合せしながらは話していますけど。
お互い初めて知ったのは『HEAVEN』という雑誌だったよね。1980年くらい、東京ロッカーズやNYLON100%……

伊藤:そうそう、そんな時代です。『HEAVEN』ではクラフトワークより前に電卓でテクノをする女の子の記事をNYLON100%で撮影したんですよ。

後藤:そうなんだ! 僕もよく行ったなあ。
でも実際に二人でいっしょに仕事し始めたのは最近ですよね。ぼくは桂司さんより4つか5つ上だけど、感覚が近すぎるとなかなか友達にならないもので。でもバックグラウンドにある文化がいっしょだから、話すとツーカーなんだけど。

伊藤:中年になってから仲良くなれた感じですよね。お互いカドが取れたというか。

後藤:この年になると同窓生のような……

伊藤:僕はリスペクトしている関係だけど。

後藤:それは僕も同じ。編集者にとってアーティストはスター。バンドで言えばボーカルとリズム隊みたいにね。

後藤:今回、「イセタン アート&クリエーションフェスタ2015」キャンペーンのひとつとして〈コカ・コーラ〉の作品もお願いしたんだけど、〈コカ・コーラ〉といえばポップアート、ポップカルチャーのシンボルだよね。
伊藤桂司というアーティストとポップアートの関係はどう?

伊藤:僕はまず高校の時にシュルレアリスムに傾倒した時代がありました。その後美術系の学校に入り、友達からの影響でポップアートを知りました。

後藤:ポップアートは1970年、大阪万博でいっぱい入ってきた印象があります。あと、横尾忠則さんの『美術手帳』アンディ・ウォーホル号や『少年マガジン』。カラフルな商品がアートになるんだという衝撃がありました。桂司さんも影響を受けた?

伊藤:キャンベルスープ缶やマリリン・モンローなどのシルクスクリーン作品をはじめ、ドローイング、イラストレーション……ウォーホルは時代を超越してやられっぱなし。それにロイ・リキテンスタイン、ロバート・ラウシェンバーグ、ジェームス・ローゼンクイスト、エドゥアルド・パオロッツィ。今もあの時代のオーラを浴びつづけている感じです。

後藤:最初に作った作品は70年代だよね?

伊藤:今見ると恥ずかしいんですど。プログレの全盛期、ジャケットをデザインしていたキーフ、ヒプノシス、中でもロジャー・ディーンを真似してみたり。それにスパッタリングという、今のスプレーアートの原型のような技法を使ったり。そこにシュルレアリスムのイメージがダブっていた感じです。

後藤:横尾さんにしても大竹伸郎にしても、当時の影響って強いよね。

伊藤:強いですね。

後藤:単純に美術だけでなく、音楽も映像もファッションも、全てが融合されている時代だった。

伊藤:僕も複合的に影響を受けました。もちろんすべてリアルタイムでなく、あとから知ってと言うのもありますが。

後藤:僕自身、それ以前のアートはなんかめんどくさい、古くさいって思っていた(笑)マックス・エルンストが好きだったし、あとカウンターカルチャーとしてのサイケデリックにも影響を受け、今の価値観が形成されていると思う。

伊藤:ちょっと時代はズレているものの、僕も同じようなモノに触れてきました。いろんなものをミックスする感覚というか。

後藤:それはコラージュとかに現れている?

伊藤:もちろん。コラージュの基本的な概念としてのデペイズマン、意外なものとの組合せが生むある種の違和感、未知のモノへの異化を生み出していると思います。コラージュは出会って、サンプリングして、融合する。そこに尽きるかなと。

後藤:ロートレアモン伯爵の「手術台の上のミシンとこうもり傘の偶然の出会いのように美しい」だね。

後藤:今回提供してくれた作品もコラージュですね。

伊藤:“Birthday Portrait”というシリーズで、1年分365枚作りたいと考えている作品です。ミスコンテストのクイーンのポストカードを見つけて、それを解体・再構築できないかなと思って作り始めました。ひとつのポートレートを元にどんどん展開していくイメージで。

後藤:作品自体レイヤーがいくつもあって、パラレルな世界というか。

伊藤:そうですね。365日だれかの誕生日であり、それぞれの顔がある。時間のレイヤーのようなものを表現できればと思っています。

後藤:ちなみにコラージュはいつ頃から?

伊藤:アートスクールのころロバート・クラムの影響でアンダーグラウンドコミックみたいなのを描こうってなって、あるとき友達がコラージュを作ってきたんです。旅行の写真やガムの包み紙などを使っていて、きたないんだけど……それにリアリティを感じ、コラージュがぐぐっと近づいてきました。逆に、エルンストへの理解度も深まりました。

後藤:僕は中学からやってるよ(笑)卒業アルバム制作委員会みたいなので、僕の担当箇所だけ卒業生の写真を全員切り抜いてコラージュしたの。

伊藤:見たい! 今度持ってきてくださいよ(笑)

後藤:もう紛失した!

伊藤桂司氏が制作した今回の「イセタン アート&クリエーションフェスタ2015」フライヤーの表紙。伊勢丹新宿店内で配布中。

後藤:最近はスプレー作品が増えていますね。あれはオーラのようにも見えるし、イヴ・クラインへのオマージュのようにも見える。

伊藤:3.11以降、「レクイエム」というテーマで始めたんです。スプレーで吹くと残像が残る。それは光を水の粒子に置き換えて影を作るような作業だなと思って。水は、地球で起こった出来事を記憶する装置だとも言われていますしね。

後藤:蛍光色が多いのは?

伊藤:影が発光しているイメージです。ステンシルとも違って立体的な、キルリアン写真のような表現を目指しています。

後藤:今後やりたいことはありますか?

伊藤:身体性、身体感覚を拡げていきたいなっていうのはずっとあります。スプレーもそういうこと。リアルなモノそのものの追求と言うか。理屈などを超えて根源的に突き動かされるモノに対して素直であると、そういうところに行き着くわけです。現代の表現はロジカルに陥りがちだけど、そうじゃない部分にも深いところがあると思っています。

後藤:最近は2人で本も作りたいなと話しているんだよね。

伊藤:そう、エルンストのコラージュロマンみたいに!

左_後藤繁雄_SHIGEO GOTO
編集者/クリエイティブディレクター/京都造形芸術大学教授。広告制作のかたわら、蜷川実花、篠山紀信、坂本龍一らの写真集やアーティストブックの編集を数多く手がける。コンテンポラリーアートの動向に詳しく、現代写真を中心に扱うG/Pギャラリー(恵比寿、東雲)を開廊させるほか、A.A.T.M.のコミッティを務めるなど、若手アーティストの発掘・育成に力を入れる。現在、企画・プロデュースを手がけた『篠山紀信展 写真力』が、全国の美術館で巡回中。

右_伊藤桂司_KEIJI ITO
UFG(Unidentified Flying Graphics)Inc. 代表。京都造形芸術大学教授。1958年東京生まれ。広告、書籍、音楽関係のアートディレクション、グラフィックワーク、映像等を中心に幅広く活動。1999年ニューヨークADCゴールド・アワード。1998/2000年メリット・アワード。〈コンバース〉キャンペーン広告のアートワークにより2001年度東京ADC賞を受賞。