大創業祭|Keep on creating “BRITISH WEEK” 英国ウイーク

英国ウイーク:11月3日[火・祝]- 10日[火]
伊勢丹新宿店本館・メンズ館=各階
英国展:11月3日[火・祝]- 9日[月]最終日午後6時終了
伊勢丹新宿店本館6階・7階=催物場

〈ビスポーク〉のオーナーシェフに聞く英国料理の“いま”

英国で料理に魅了され、ガストロパブ「ビスポーク」を開店するにいたった野々下麗さん。ご自身の料理の原点から、英国料理の現在、伊勢丹新宿店の英国展の出店のことまで、幅広くお話を伺いました。

大学卒業後、日本で約2年働いてお金を貯め、英国に留学したという野々下さん。目的は料理ではなく、語学と音楽の勉強だったそうです。

「私は東京生まれで、ひとり暮らしも初めて、自炊も初めてと、初めてづくしの留学だったんです。ただ、91年頃の英国の料理は高くてお世辞にもおいしいとは言えなかったので、これは自炊にトライするしかないなと思って。

食材の英語名もよく分からず、キッチンも限られていたので、最初は卵やベーコンを焼いて食べているくらいでしたが、最後は電子レンジでスパゲッティ・ボロネーズまで作れるようになっていました。

あと、家の近くに毎日マーケットが立つ通りがあって、その影響も大きいですね。外食は高いけれど食材は安い。そうして料理にハマっていった結果、今ではお店を持つことにまでなっちゃって自分でもびっくりしています」

「英国に行った目的は音楽だったので、帰国してからCDも1枚出したんです。インディーズですが。でもやっぱり料理に惹かれる気持ちがどこかにあって、カジュアルフレンチのお店でアルバイトを始めました。バンドも辞めちゃって。

それからいろんなお店を渡り歩き、2012年に独立しました。料理歴は今で20年くらいですね」

独立直前、久しぶりにロンドンに行ったという野々下さん。今のお店の方向性が定まったのはその時でした。

「ロンドンの街でショップの外観などを撮影しているうちに、やっぱり自分のお店をやるなら自分が一番詳しいもの、一番好きなもので勝負したいと思うようになりました。本当は流行りのスペインバルにしようかなとも思ったのですが、「やるからには自分にしかできない事でなければ価値がない!」と思いました。それが英国料理だったのです。

日本でお店を始めて一番困るのが食材の入手です。こればかりはどうしようもないので、作れるものは調味料も含めてすべて作ることにしています。現在、自家製でないものはモルトビネガーくらいでしょうか(笑)」

「〈ビスポーク〉では、実は英国の古典料理を出しているわけではないんです。いま、英国で実際に流行っているもの、リアルなスタイルを提供しています。日本でも定食屋さんに行ってハンバーグなどを食べるのと同じように、英国料理というカテゴリーに収まる必要はないかなと思っています。

毎年2週間から1カ月は英国に行って、食のトレンドをキャッチして、情報のアップデートをするようにしています。あとは日本で手に入らない食材の買い付けも目的ですね。

最初は長期連休にお客さまもびっくりされていましたが、今では英国の最新情報というお土産を楽しみにしてくれています。お客さまも一緒に英国まで行っちゃうこともあるんですよ(笑)」

野々下さんも当初はパッとしないと感じていた英国料理でしたが、近年はその様子が大きく変わっているようです。

「英国料理は確実に進化しています。理由の1つが移民の流入。2000年頃から移民と同時に新しい食材も多く入ってきました。現在ではヨーロッパ随一の食材の宝庫だと思います。

ジェイミー・オリヴァーをはじめ、新世代のシェフの台頭も大きな理由です。今では英国のどこの家庭でもジェイミー・オリヴァーの料理本があるし、シェフの地位も大きく上がりました。英国料理界はいま、食材と人、両方の歯車ががっちり噛み合っている状態です。

ちなみに昨年の夏、英国に行ってすごく流行っているなと思ったのがハンバーガー。英国ではファストフードに行くのが恥ずかしいみたいな風潮も生まれていて、ヘルシー志向の一つの表れかもしれません」

野々下さんがそこまで惹きつけられる魅力はどこにあるのでしょうか。英国の一般的な食生活についてもお聞きしました。

「英国の魅力を具体的にと聞かれても難しいですが、私にはただ漠然と、どこを見てもかっこよく思えるんです。

逆に嫌なところはシャワーの出が悪いことと、スーパーのレジが遅いこと(笑)。私にとって東京の良さはすべてが行き届いていて、安全で便利なこと。ロンドンはそのすべてを我慢しても住みたいと思う街です。

一般的な食事に関しては、主食はパンだと思われがちですが、実はじゃがいもですね。スーパーに行くと6種類以上は置いてあり、茹で、揚げ、ロースト向きなど重要な食材であることが伺えます。

またワンプレートに全部盛り付けるところも特徴かな。フレンチみたいに1品1品出てくるような感覚はあまりないです。料理人としては味が混ざっちゃうじゃんって思うんですけど(笑)

英国に住んでいるといろいろ不便だったり嫌だったりすることもあるけれど、日本に帰ってくるとまた行きたいなと思わせられるんですよね。不思議です」

今回、伊勢丹の英国展では野々下さん自らが来店し、腕をふるってくれます。ちなみにその間、東中野のお店はお休みだそうです。

「今回お出しするソーセージは、国産の豚肉にたっぷりのフレッシュハーブとスパイス、イングランド東部のリンカンシャーのスタイルです。付け合わせにマッシュポテト、そしてオニオングレービーソースをかけています。

他にはスモークサバのリエット、自家製ハムのサンドイッチ、サーモンとほうれん草のパイ包みなどを出品予定です。あとはビールのIPA、エール、そしてサイダーもタップで出して、催物場にパブがやってきたみたいな雰囲気を演出できればなと思っています」

「ないものは作ればいい」「好きなものを突き詰めていきたい」そんな野々下さんの人柄と料理に惹かれて、〈ビスポーク〉には日本中からお客さまが来店されるそうです。ご本人の印象と同じく実直そのものの料理を、ぜひ英国展でお楽しみください。

家庭でも楽しめる英国料理レシピを教えていただきました。

やわらかくて旨みもたっぷり、簡単なのにびっくりするぐらいウマイ!
ポークのボイルハム

  • 豚もも肉のかたまり500g・塩100g・砂糖30g・水50mlをナイロン袋に入れ、24時間程度寝かせる。
  • 袋から取り出し、塩を水洗いして、弱火で35~45 分茹でる。
  • 食べる直前に薄くスライスする。お好みでアップルジャムや粒マスタードを添えて。

野々下麗(ビスポーク オーナーシェフ)
東京都出身。大学卒業後、英国に渡り、料理に目覚める。さまざまなジャンルの飲食店を経て、2012年「BESPOQUE」開店。オーナーシェフとしてすべての調理を手がける。現在は連日満席になる人気店に。