『ルパン三世』×〈テーラー&カッター〉スペシャル対談

カッコイイ男の
流儀を盗みだせ!

『ルパン三世』新テレビシリーズプロデューサーの浄園祐氏と、ルパンコラボレーションジャケットを手がけた〈テーラー&カッター〉の有田一成氏。「カッコイイ男」をテーマに、アニメーションとファッションのプロフェッショナルが語る。

――実はおふたりは同年代なんですね。

有田一成氏(以下有田):そうなんですか。僕は茨城県出身で1971年生まれです。

浄園祐氏(以下浄園):僕は静岡県出身で1972年生まれです。
小学生のころは平日の夕方や土曜日といえば『ルパン三世』や『ヤッターマン』、まだまだ子供がたくさんいて、合成着色料の駄菓子とファミコン、ガンプラにまみれて育ちました。

有田:まさに僕も同じです。駄菓子世代です(笑)。
友達と野球をして、家に帰ってアニメを観て、家族で夕食という毎日。

浄園:ただ『ルパン三世』は僕らよりひとつ上の世代、いま50歳くらいの方がリアルタイムで観ていたアニメなんです。
放送中の『ルパン三世』は僕らの世代にとって初ともいえるリアルタイムのルパンシリーズです。過去の遺産にあこがれて追いかけている感じだったので、「現代のルパン」を作れることをとにかく嬉しく感じています。

――『ルパン三世』が大人も惹きつける理由は?

浄園:『ルパン三世』には「リアル実証主義」といわれる哲学があります。フィアット500やメルセデス・ベンツSSKなど、実在のものをアニメに登場させるという。ワルサーP38なんてルパンが使っていなかったら……。

有田:きっとみんな知らないですよね。

浄園:たとえばフィアット500も第1作の作画監督、大塚康生さんの愛車でした。そういった子供だましじゃないアイテムやその描写、男の格好いい生き様など実証主義的なものをアニメに盛り込んだんです。

有田:ジャケットに腕を通す描写なども格好良さを感じます。

浄園:実は、第1作(テレビ1stシリーズ)の『ルパン三世』の初回放送は視聴率が低くて全23話で終了しました。『巨人の星』とか『アタックNo.1』の時代、家族で観ていて不二子がいきなり裸で出てきたら、もうチャンネルを変えざるをえないという。
1971年、有田さんがお生まれになった年の放送でした。

有田:第1作は大人向けというわけでもなく?

浄園:作っていた人たちは、やっと大人っぽいものが作れるという嬉しさがあったと思います。声優も音楽も含め、格好いい大人たちが真剣に格好いいものを作ろうとして生まれたのが『ルパン三世』でした。

――アニメから現実のジャケットを作るのは難しかった?

有田:最初お話をいただいたときに、僕なりのルパンにしたいなと思ったんです。ちょっとセクシーな感じとか。ただファンからすると、それはルパンじゃないって絶対に言われるでしょうから、ある程度の再現性と独自性を組み合わせようと。

浄園:ルパンのコラボレーションはいろいろありますが、こんなに本格的なものはいままでなかったんじゃないかと。ルパンファンはファッションにもこだわりを持っている人が多いように感じています。このジャケットはそういった方にも響くアイテムじゃないかなと思います。

有田:ディテイルに関してはアニメや資料で研究しました。たとえばアニメではポケットが省かれているんですが、ポケットからものを出すシーンもあり、実はポケットがあるんじゃないかとかとか、いろいろ悩みました。
ただ、結局は遊びすぎていないというところがポイントだと思います。アニメではルパンがサヴィル・ロウで仕立てているシーンもあり、きちんとしたもの、定番的なものを着こなしでおしゃれにしているのではないでしょうか。
あとはフィッティングなのかなと。やはりルパンらしく全体的にタイトに。

浄園:着こなしのポイントはありますか?

有田:このジャケットを仕立てるとして、ルパンそのままのスタイルでというよりは、ルパンを感じつつもお客さまが自分自身を表現していただければと思っています。コスプレになるとちょっと違うかなとも思いますが、ルパンカラーのお仕立てのスーツを着ること、それはすごく格好いいことだと思います。

浄園:確かにそうですね。アニメ的には青いジャケットと青い空が干渉して難しかったです(笑)。

――おふたりのファッション遍歴は?

有田:中学生の頃から太いパンツを自分でミシンを使って細くしたりはしていました。高校生の頃は美容師かファッションデザイナーかどっちかかなと思っていて。あまり頭もよくなくて(笑)。
その後はずっとテーラーですが、自分の中ではデザイナー兼スタイリストだと思ってやっています。

浄園:僕は洋服が好きというか、買い物が好きですね。ただ見ているだけでも満足できるタイプです。男性にとって格好いいファッションってなんでしょうか?

有田:僕はスーツ屋さんですが、スーツを着ることが格好いいという風には思っていません。ただスーツを着たときに格好よくあるためには、普段からスーツを着ることが大切だと思います。メガネとかもそうですが、初めてかけたときってなんだか似合わないですよね。でもずっとかけていたら、ものすごく格好よくなるんです。
ヨーロッパの人たちは杖をついたりしますが、これがすごく格好いい。なぜなら持ちなれているからです。たとえば60歳で杖を格好よく使いたかったら、50歳で持ち始めた方がいいというアドバイスをしています。

浄園:ルパンも服が格好いいだけじゃなくて、着こなしや身のこなしが格好いいですから。

有田:アニメでも現実でも同じですね。 現代ではクールビズの影響でスーツを着る機会も減っていますが、ビジネスの作業着・制服的な考え方だけでなく、たとえば金曜日はスーツを着てバーに飲みに行こうっていうスーツの楽しみ方があってもいいのではないでしょうか。
ルパンも普段は同じ服装だけど、TPOに応じてドレスアップしたり、ああいうのがすごく格好いいと思います。

浄園:確かにいいですよね。僕も40歳をこえて、鏡を見るとおっさんになったなあと思うんですが、スーツを着ると20代の頃よりも着れているなという感覚はありますね。

有田:今日のスーツは次元のイメージですか?

浄園:ですかね。なんとなく(笑)。

――現在の活躍に至るまでの、下積み時代は?

浄園:ずっと寝られないとか、ご飯も食べられないとか?

有田:ご飯は食べていたんですが(笑)。学生生活を終えてすぐ英国に渡り、サヴィル・ロウの〈ギーブス&ホークス〉にて無給で働かせてもらいました。トップクラスのカッターにつかせてもらったんですが、最初は使い走りのような。あれを買ってこい、これを用意しろ、アイロンをかけておけといった具合です。
大きなアイロン台が1つしかなくてけっこう並ぶんです。僕が並んでいたら「キミはお金を貰っていないんだから俺の後ろに並べ」と。皆はプロとしてタイム・イズ・マネーだし、日本人ということでバカにされているところもあったんでしょう。でも僕はそこにいられるだけで嬉しかったので、とくに腹が立つこともありませんでした。2カ月ぐらいたつと「お先にどうぞ」って認めてもらえ、嬉しかったことを覚えています。
いまでも徹夜で縫ったりもしますが、仕事をしていて嫌だなと思ったことは下積み時代から含めてただの1度もないですね。

浄園:僕の下積み時代は会社のデスクで寝て、起きたら隣の同期が逃げていなくなっちゃったり。20年前のアニメ業界はひどかった(笑)。でも、嫌になったことはやっぱりないですね。
つい先日も夜11時にフィルムを納品する予定が朝の6時になっちゃって。できあがってはいても、もうちょっと直したい、もうちょっと良くしたいの繰り返しです。

有田:徹夜とか苦労って、作品にストーリーを与えてくれる部分もあって、それもまたいいですよね。そういった突き詰める美学のようなものって、僕らの世代はルパンなどのアニメから影響を受けているのかもしれません。
引き取りに来られる30秒前まで詰めて、詰めて、何食わぬ顔でお渡しするってこともありますから(笑)。
下積みでも、徹夜作業でも楽しんでやると、お客さまもきっと感じてくれるものだと思います。

浄園:ぜったいにそうですね。

――今後の目標は?

有田:新しことに挑戦すること、時代の波に乗ることはもちろんいいことです。ただ、〈テーラー&カッター〉は11年目なんですが、僕がよく通っているバーは同じところで26年やっている。同じところで同じことをやっていくことも格好いいことだと考えています。
目標が同じことをやっていくことだと言うとつまらなく思われるかもしれませんが、そうありたいです。変わらず続けるということの価値も若い人たちに伝えて行ければと。ただもっと年をとってくると、若いヤツには負けねえって言っているかもしれませんね。

浄園:テレビアニメ『ルパン三世』は誕生から40年以上たち、いままで宮崎駿さんなど著名なクリエーターが何人も手がけてきた作品です。「ルパンらしさ」というのは難しく、解釈も人によりさまざまですが、どうやったら『ルパン三世』になるか、テレコムにおいても先輩から後輩に引き継いでいっている感じです。
そんな中、作画アニメとしてやって行けるかということが、ひとつの目標というかテーマになっています。ルパンをルパンらしく作る、それは日本のアニメーションらしさでもある気がするんです。

有田:いわゆる師弟制度的な。テーラーも同じです。やはりデジタルとは違ってきますか?

浄園:今作は20代の方にも多く観てもらっていますが、すごく反応が良いですね。でも10年後、20年後は分かりません。さっきのバーの話じゃないですが、やり続けていくことが大切ではないでしょうか。
バーという型やスーツという型は決まっていて、ルパンらしさという外せない型もある。決して型破りになる必要はなく、その中でも新しい提案はできるんじゃないかなと考えています。

テーラー&カッター
有田一成
Kazunari Arita

1991年に渡英し、名門〈ギーブス&ホークス〉で修業。2004年に独立し、南青山に店を構えた。彼のスーツは、ロープドショルダー、前裾のカッタウェイ、フレアになった袖口が特徴的。スーツ=ビジネス着の概念を覆し、着る行為そのものが楽しめる感度の高いスーツを提案。

株式会社テレコム・アニメーションフィルム
代表取締役社長
浄園祐
Yu Kiyozono

OVA作品『ルパン三世GREEN VS RED』、スピンオフ作品『峰不二子という女』や『次元大介の墓標』などを手がけたプロデューサー。放送中の新テレビシリーズもプロデューサーとして陣頭指揮を執る。

撮影協力
TAILOR&CUTTER
www.tailorandcutter.jp