京都歴代のれん市

「いまでは300年の歴史が
味方になった感じですね。」
〈聖護院八ッ橋総本店〉
専務取締役 鈴鹿可奈子氏

聖護院八ッ橋総本店

八ッ橋の由来とされる近世筝曲の開祖「八橋検校」没4年後の1689年に、聖護院の森にて玄鶴堂として創業。現在は鈴鹿且久社長のもと、320年以上にわたる長い歴史と伝統の味を継承し続けている。

鈴鹿可奈子(すずか・かなこ)

〈聖護院八ッ橋総本店〉専務取締役。京都市生まれ。京都大学経済学部経済学科卒業、在学中カリフォルニア大学サンディエゴ校エクステンションにてPre-MBA取得。卒業後、信用調査会社勤務を経て、2006年聖護院八ッ橋総本店入社。2011 年には新ブランド「nikiniki(ニキニキ)」を立ち上げた。

1. 聖護院八ッ橋総本店らしさとは

これこそ聖護院八ッ橋総本店だというわかりやすい特徴は、「おいしい」ということ以外に実はあまりないんです。私たちが意識しているのは「おいしさ」だけ。特徴はそれぞれのお客さまが感じられることだと思っています。
素材について言うと、たとえば米粉の場合、産地や品種は決めずにブレンド米です。産地や品種を決めてしまうことで、もしそのお米が作られなくなってしまうとお菓子も作れなくなってしまうからです。お米が変わるとお菓子のおいしさも変わる。それでは味を継いでいることにはならないので、毎年いちばん八ッ橋に合ったブレンドを決めています。

2. 変わらない価値

米粉とお砂糖を混ぜ合わせて肉桂で風味付けをするものという八ッ橋の定義は絶対に守ります。その定義を変えてしまうと、もう何屋さんだかわからなくなってしまいますよね。新しいことにチャレンジするときも、八ッ橋をもっと多くの人に伝えていきたいという思いからですから。
そして、食べておいしいということ。奇抜な見た目やパッケージなど新しいことも考えますが、味がいいということがまず大事です。

3. 家業を継ぐということ

家を継いでと強要されたことはないのですが、自然とそう考えていました。お正月にはわが家の新年会に社員さんたちが集まってカルタ遊びをしてもらったり、公式行事にも物心ついたころから参加したり、幼い頃から会社の人と接していて。家族以外で最初に抱っこしたのも社員さんというぐらい(笑)。
初めて家を継ぐと口にしたのは中学校に入ったころです。いろんな未来があるけれど、私は八ッ橋というお菓子が大好きだったので、それを売る仕事がしたいなと思い、父に「家を継ぐ」と伝えました。
進学なども意識して選んでいった部分もありますが、就職活動に専念しなくても良い分、制約のない学生のうちに留学などいろんなこともできましたね。

4. 300年の歴史の重み

最初のころは感じていました。別の会社で1年働いたあとに入社したのですが、いざ入社するとあらためて300年以上の歴史ってけっこう大変なことかもしれないって(笑)。
ただ、仕事をするうちに、歴史を守ることも大事かもしれないけれど、いちばん大切なことは聖護院八ッ橋総本店で働いている方の生活を守ることで、そっちのほうが大変だなと。そう考えるようになって、年数の重圧はなくなりました。
さらに新ブランドのnikinikiを立ち上げたとき、京都の方々が受け入れてくださったのですが、やはり本体の会社の歴史があり、八ッ橋が浸透しているおかげかなと。歴史があることで支えてくれる人がいる。いまでは300年の歴史が味方になった感じですね。歴史があるからこうしなきゃいけないではなくて、歴史があるからこそいろいろ冒険できるんです。

5. 仕事のモットー

「好きという感覚を押し殺さない」ということです。商品を開発するときも売れるかどうかを考える前に、まずその商品を好きになれるかどうかを大切にしています。好き嫌いが激しいので(笑)、自分が好きじゃないと熱意も入らないですし、好きだと思ったらそれを伝える方法は自然といろいろ思いついてきますし、お客さまにも伝わりますから。
あとはとりあえず動くということですね。やってみないと分からないことも多いですし。

6. オフの楽しみ

意外といわれるんですけど、身体を動かすのが好きです。テニスとか、スキーとか。
あとは勉強というか、新しいことを知るのは好きですね。いまは京都のことを勉強するのが楽しいです。いろんなお祭りや寺社に足を運んで、お話を聞いたり。仕事で海外からのお客さまをご案内することもあり、その時に自分のほうが知識がないと困るという思いもありますが、それ以前に京都のことは知れば知るほどおもしろいんです。
読書は小説ばかりですね。ちょっと男っぽいんですけど、繰り返し読んでいるのは北方謙三さんの三国志とか。宮部みゆきさんは全部読んでいます!

お買物は、京都はもちろん新宿の伊勢丹にも行きますよ。靴の品揃えが多くてお気に入りです。他のアイテムも「ここにしかない」ものが多いイメージです。

7. つらいこと

楽天的なのかあまりないんですが、あえて挙げるなら時間が足りないことですね。やってることは全部楽しいことなので、本当はもっとすべてに熱を入れてやりたいんです。

8. これからのこと

子どものころから八ッ橋が本当に大好きなので、100年後、200年後もみんなが八ッ橋を食べて「おいしい」と言ってくれる。それが夢ですね。

刻んだ桜の葉を練り込んだ生八ッ橋で桜あんを包み込みました。桜の葉の塩気がアクセントになって、いくつも食べたくなる春限定のおいしさです。

〈聖護院八ッ橋〉櫻花(オウカ) 540円 (9個入)
〈聖護院八ッ橋〉祭菓 古都の春 540円 (10個入)